Summer Snow
以前真冬に小樽に行って泊まったことがある。
その日は朝から大雪で列車ダイヤが乱れていた。
雪が降り続く海沿いを走る列車は
まるで海の上を走っているようだった。
宿にチェックインする前に静かに降る雪を払いながら
夏なら賑わうだろう街を歩いた。
老舗のおそば屋さんでニシンそばの昼食。
凍てついた誰もいない商店街を抜け
探し出したあまとうでクリームあんみつを食べた。
宿では最上階の特別室だった。
10人は泊まれる部屋に2人だけ。
とても美味しい食事が出た。
例えば、見事な蝦蛄、そいのお造り。
夕方から猛吹雪になっていて、深夜でも雪明りで外は明るかった。
除雪車がいつまでも行ったり来たりしているのが見えて
ずっと黙ってそれを見詰めていた。
窓枠に積もった雪を手を伸ばして固めてみたがすぐに崩れた。
冷気の堆積に閉ざされて時間がさらさらと圧縮された厳冬の夜。
確実だったのは遠近感を失った親密さだけ。
つないだ手に安心していた。
今日もとても蒸し暑い。